レポート

Unite of Genetics and Bacterial Genome  
蒔田由布子 

パスツール研究所に来て、早いものであっという間に半年が過ぎようとしています。私にとっては初めての海外生活で、フランス語も全く話せないため、不安もありましたが、大きな問題にあたることなく、小さな不便には徐々に慣れつつ生活しています。

フランス語
まずフランス行きに関して、大きな壁となるのは、言語だと思います。私の所属しているバクテリアゲノム遺伝学研究室では、フランス語を話さない留学生やポスドクが多く、日常生活はすべて英語です。また秘書さんも英語が上手なため、研究室内では残念なくらいフランス語の必要性がありません。日常生活においては確かに困ることもありますが、パリ市内では非常に多くの人が英語を話します。たとえお店の人がフランス語だけでも、そばにいたお客さんが通 訳してくれたりして、なんとなく済んでしまっています。突然蕁麻疹が出て病院にも行きましたが、フランス語なしでもどうにかなりました。さすがに薬の飲み方だけは何度も確認しました。

銀行口座&滞在許可書
ちょうど同じ頃、日本から友人がパスツールではないパリの大学でポスドクを始めました。何度か会っているのですが、銀行口座の開設にしても、滞在許可書にしても、パスツール研究所は恵まれているようです。友人の苦労話を聞きつつ、大変なんだぁ?、と人ごとで済みましたので。銀行口座においては、パスツールで薦められた銀行に、必要書類を用意して一人で行きました。だめだったら、誰かにお願いして付いて来てもらおうとは思いましたが、とりあえず自分一人で試したところ、英語で親切に説明してくれ、口座を作ることができました。滞在許可書においては、私の準備不足で戸籍謄本が必要なことを知らず、日本から取り寄せ、さらに法定翻訳をお願いするのに時間がかかってしまいました。しかし書類を用意した後は、ひたすら待っていると健康診断の時間指定の連絡が来て、それに行ったその足で滞在許可書がもらえます。
日本と同じスピード感で生活しようとすると、どうしてもイライラしてしまいます。忘れるくらいの気持ちで待っていると、本当に忘れた頃届きます。

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寮生活
パスツールの寮には4ヶ月滞在しました。研究所から歩いて5分くらいのところにあり、治安もよく、駅も近く、エッフェルタワーも見えます。管理人さんはとても親切ですし、インターネット、TV、冷蔵庫、電子レンジ、食器などの生活必需品もそろっています。唯一、洗濯機がなく、初めてのコインランドリー経験をしました。料理より洗濯の方が大切な私にとっては大問題だったのですが、普通 は問題ないようです。寮を出る際には、管理人さんに「これからパリでの本当の生活がはじまるね」と言われたのが、なんだかこそばゆかったです。
新しい家はインターネットで見つけました。パスツール内の掲示板にも貸部屋情報がありますので、それで見つけている人もいるようです。

研究室
研究室の雰囲気は、基本的には世界中どこでも同じなのでしょうね。私自身の生活スタイルもほとんど変わっていません。ただ、フランスの方がうらやましいな、と思う点も少なくありません。
まず、日本に比べると子供もいるお母さん研究者が断然多い点です。私が以前所属していた研究所とは比較にもなりません。日本においては「まねできない」と思うくらいのハードな生活を強いて両立させていますが、こちらではそこまでの壮絶感なく両立させています。
次は、やはりバカンスでしょう。7月8月の研究所はガランとしていました。本当に1ヶ月休みを取るんです。私もせっかくの機会ですので、2週間の休みを取り、ニューヨークの友人研究室を訪たり、思い切って今まで論文を通 じて名前だけ知っていた研究者の方にメールを書き、研究室訪問をさせて頂いたりしました。日本にいては考えすらしなかったと思うので、よい経験ができたと喜んでいます。
それからこれはパスツール研究所に限ってのことだと思いますが、世界中から多くの研究者がセミナーに来ており、発表を見ることができます。毎日2つくらいあり、自分の興味のあるものに絞ると1、2週間に一つくらいのペースです。興味あるものがフランス語だとがっかりしていますが、日本においての日本語発表よりは、断然英語の発表が多いです。

 

もう残りの半年です。できるだけ多くの経験を積んで過ごしたいです。