![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
パリに来て、あっという間に一年が終わってしまいました。この一年間で、多くの刺激的な体験が出来ました。文化の差、食事、住居、書類手続き等、先輩方がすでに報告された問題も、ひと通り経験し、ようやく慣れてきたところです。
フランスに来たら、当然、会話はフランス語、というのが一般的です。しかし、私の言語環境は、パリでも、そしてパスツール研究所においても、おそらく特殊でしょう。まず、ボスがカナダ人で、フランス語はペラペラですが、母国語は英語です。ラボは国際色豊かで、日本人のほか、インド、イタリア、アルゼンチンと、フランス語を母国語としない国からの研究者が多く、ほぼ全員、英語を流暢に話します(私の英語が一番下手です)。そして、サイエンスに関することは、当然すべて英語。ラボ内のセミナーでフランス語が出ることはありませんし、Départementや研究所のセミナーでも、ほぼ英語。日常的なディスカッションや、その他の相談事も、ほとんど英語。というわけで、一日の大半を、フランス語を使うことなく過ごせる環境にあるのです。おかげで、英語でのコミュニケーション能力は格段に進歩したと感じられるのですが、その反面、フランス語は未だに挨拶程度しかできません。
その国に来たら、その国の言語を話すというのが、その国の文化を深く知る第一歩だとは、常々意識していますが、こうまで使う機会がないと、なかなかその一歩が踏み出せません。フランス語上達が、今後のフランス生活の目標です。
研究は、個々の研究者の能力も問われますが、やはりボスの力も大きく影響します。パリの研究者仲間によく聞かれる質問は、「なぜフランスに来たの?」です。答えは単純で、今のボスのラボで研究がしたかったから、これに尽きます。ボスの研究は、大学院時代のテーマからも程近く、かつ、この分野であれば知らない人はいないという、トップサイエンティストのひとりです。
ボスは自他ともに認めるハードワーカーで、ラボのメンバーに対するプレッシャーは相当なものです。特に、大学院生にはトレーニングをしているという意識があるようで、厳しい指導が飛びます。その厳しさは、大学院生の間では有名らしく、他のラボの大学院生に、Shahragim研所属であることを話すと、それは大変ね、という反応が返ってきます。当然、ポスドクにも厳しく結果が求められます。その厳しさたるや、ボスいわく、「私が自分のラボのポスドクだったら、私は働けない」と、冗談交じりに言うほど。そういった厳しい面もありますが、サイエンスに対しては真剣かつ誠実で、本当に最高の環境で研究できていると感じています。
今年からは、ボスに直接雇用される形で、少なくとももう一年間、研究を続けられることになりました。この一年で得た経験を活かし、さらに発展的に研究が進められたらと考えています。
最後になりましたが、今回の渡仏をご支援いただいた日本パスツール協会、フランス政府と在日フランス大使館科学技術部、ならびにエール動物病院、受け入れを快諾いただいたShahragim TAJBAKHSH教授に、心より御礼申し上げます。