氏名:橋本 宗明  

所属:順天堂大学 医学部 熱帯医学・寄生虫病学講座 准教授

専門:寄生虫学、分子細胞生物学

パスツール研究所での所属先:
Laboratoire des Processus Infectieux à Trypanosomatidés, Département Infection et Epidémiologie

研究内容:クルーズトリパノソーマによる非特異的B細胞活性化の分子機構の解明

クルーズトリパノソーマ( Trypanosoma cruzi )は シャーガス病の原因病原体です。シャーガス病に対する実用的な薬剤やワクチンは未だ存在せず、その開発が急務です。本研究室では本原虫がほ乳動物に感染すると非特異的なB細胞の活性化が起こることに注目し、研究を進めています。一般的にこのようなB細胞の活性化は病原体に対する免疫系による攻撃を妨げると考えられています。本研究室で T . cruzi はプロリンラセマーゼ(TcPRAC)を分泌し、非特異的B細胞の活性化を起こすことを明らかにしました。しかし、どのようにTcPRACがB細胞を活性化するのかについての分子機構は全く未知です。そこで、我々はB細胞膜上にTcPRACに対する受容体が存在すると過程し、その同定を目指しています。

<体験記>

平成25年3月から、私はパスツール研究所で実験を始め、これが私の初の海外留学でした。日本では10年以上の間、中南米でシャーガス病を引き起こす寄生原虫 Trypanosoma cruzi の研究をしてきました。今回、留学期間が1年間ということでしたので、新しい研究生活に慣れるまでに時間がかかることを考慮し、できれば T. cruzi の研究をしている研究室で研究したいと考えました。そこでPaola Minoprio先生に彼女の研究室で働きたい旨、メールで伝えると、すぐに快諾して下さいました。

Paolaは長年 T. cuzi の研究をするブラジル人研究者で、パスツール研究所においてprincipal investigator として活躍しています。Paolaはとても人懐っこい性格で、ディスカッションが大好きです。研究室ではPaolaと私以外はフランス人ですが、Paolaが一番多くフランス語で話します。フランス語に関しては日本にいる間に2、3冊の本で一生懸命、独学で勉強をしましたが、聞き取りが難しく、ほとんど出来ませんでした。フランス語がもう少しできていたらもっと楽しかったと思います。ですから、フランス語にあまり自信のない方は、働いている研究者が国外からの人が多い研究室を選ばれる方がよいかもしれません。

研究生活に関しては、1年間過ごした結果、それほど日本の研究室と大きな差はないと思いました。当たり前かもしれませんが、予想通りのよい結果が出ればとても喜び、反対にうまくいかなければ落ち込みます。そして大体はみんなよく落ち込んでいます。研究者も日本の研究室と同じように様々な個性の人達がいました。本当はこの体験記ではいかに違うかを書きたかったのですが、みんな苦労してるんだなというのが正直な感想です。しかし、今回の留学で、そのことを実感できたのが私の研究人生において大変大きなことだったと思います。

パリでの生活に関してですが、パリには多くの国々から人が働きに来たり、観光に来たりするため、多くの物事(買い物や電車に乗るなど)がシステマチックになっています。支払いはほとんどクレジットカードですし、最低限のフランス語を憶えておけば、それほど日本での生活と大きくは変わらない印象でした。勿論、異国の地なので、最初は大変な事も多いですが、すぐに慣れると思います。

最後に、今回の留学を支援してくださった日本パスツール協会とフランス政府、留学を快諾して下さったPaola Minoprio先生および研究室の皆様、順天堂大学の諸先生方、そして終始支えてくれた妻に心から感謝を申し上げます。

平成26年2月
橋本宗明